背徳の恋人2












「――――その髪、どうしたんだ?」

何時ものように桂率いる攘夷浪士の部屋に飛び込んだ沖田は、開口一番そう言った。

桂が高杉一派と衝突した一件は沖田も土方から聞いていた。

だがその件で真撰組の要請はなく、結局は事後報告しか受けていない。穏健派だろうが過激派だろうが、攘夷浪士達が討

ち合って共倒れしてくれればいいとの御上の考えだろう。

その話を聞いた途端、何よりも誰よりも彼の事が気に係り、沖田は単身、屯所を飛び出していた。

桂は一人、その部屋に居た。

「イメチェンだ。似合うか?」

しらっと、彼は言う。

「―――――・・・似合わねぇよ。高杉に、やられたのか・・・?」

「イメチェンだと言っている」

「――――――」

沖田は舌打ちした。敵である自分に言う事などない、という事なのだ。

「どうした?今日はバズーカ打たないのか?」

期待、していたのだろう。

桂が自分に告白した言葉が真実である事を。特別である事を。

何時の間にか彼に惹かれている事実を、しっかりと認識する。

ペースを崩さない彼に対するこの失望感。

その悔しさ。

彼がこの世から消えてくれれば、少しは楽になるのだろうか。

「・・・頼むから、死んでくれねぇかなァ」

沖田はそう言うと、バズーカを構える。

「すまない」

桂は不意にそう言った。

「俺も早く楽になりたいが、そうも言ってられないらしい」

「―――――言う気ねぇなら死ね!」

ふと、桂の表情が和らいだ。

「聞くのか?・・・そこまで俺に係わって、お前は無事でいられるのか・・・?」

沖田の手が震える。

無事も何も・・・。

「・・・もう、手遅れでィ・・・」

こんなにも気になって仕方がない。彼の記憶毎、全て失ってしまいたいくらい。

桂は静かに立ち上がると、沖田の近くに寄って来た。

その手が伸びて腕に触れる。

「俺達は敵同士なのに・・・、仲間であった筈の高杉よりずっと近い気がする」

そのまま桂の胸の中に抱き寄せられるが、抵抗はしない。

後何度、こうして抱き合えるのだろうか。

――――――きっと、俺にアンタは殺せない。

この裏切りを知った時、土方はどんな想いをするのだろう。

桂は高杉を殺せるのだろうか?そして真撰組を、自分を殺せるのだろうか?

この想いを貫こうとすればするほど、絶望しか見えない。

けれど、捨てられない。

「・・・どれも捨てられないってのは、こういう事なんですかねィ・・・」

桂が微笑む気配がした。

「ほら、俺達はこんなにも近い。言葉を交わさなくとも同じ想いを抱ける。だから――――」

落とされるキスに応えながら、沖田は絶望を想った。


その時が早く来ればいい。


この、幸福で辛い時間が早く終わればいい。





願った。





















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以前に書いた拍手お礼がふと出てきたので・・・。
苦し紛れの更新でした(涙)
お、怒らないで下さいませ〜




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