恋愛のススメ −おまけー




土方はそっと沖田を抱き締めた。
反抗はない。その気配さえ。
その事に心から感動を覚える。
ようやく、ようやくこの時が来た。
隊士達の嫉妬の視線と雑言、嫌がらせの数々に耐え、ようやくこの瞬間を迎えた。
今日は特に長い一日だった。
「屯所がいい」
という沖田の要望に応え、式はここで挙げた。
披露宴とは名ばかり。何時もの飲み会になってしまった状態に苛々しつつ、ひたすら二人になる時を待った。
白無垢に身を包んだ沖田ばかりが気に係り、酒の味も覚えていない。
あれからー――――、
沖田の姉、ミツバが宇宙へ旅立ち、その時ようやく抱きしめる事が出来た。
だが、その後は案の定やはり指一本触れてない。
「夫婦になるまではイヤ」
というのだから仕方ない。
この我侭に付き合い、気の短い自分がここまで耐えた。
それは賞賛に値するのではないか。
「土方さん、これからよろしくお願いします」
単に着替えた沖田が布団の横に鎮座し、丁寧に頭を下げてそう言った。
何もかも報われた気がする。
恐る恐る手を伸ばし、細い肩を抱き締めた。
「・・・ほんとは、姉さんにも来て欲しかったけど・・・」
ぽつり、と沖田が言った。
ミツバは遠い惑星で元気に過ごしているらしい。何度か写真と手紙が送られていた。
「私が幸せになる事が恩返しだから、いい事にする」
にっこりと笑う沖田があまりに可愛くて、土方はぐっと手に力を入れた。
「お前、幸せ・・・、か?」
「うん。後は元気な跡取りを姉さんに見せなくちゃ」
「そー・・・、だよ・・・、な・・・」
どくん、どくん、と心臓が脈打ち始める。
焦るな、と自分に言い聞かせ、でものろのろしていたら鼻血が出そうだ。
「じゃ、じゃあ・・・、」
沖田を布団に促すと、彼女は元気良く頷き、勢い良く手を差し出した。
「・・・?」
一瞬首を傾げ、だがその手を握り返す。
「おやすみなさい」
そう言った沖田の笑顔が眩しかった。
・・・おやすみ?
疑問を残しながら、それでも先に布団に入った沖田の体に触ろうと、もう一方の手を伸ばしてみる。
途端、平手打ちが返ってきた。
「―――――??」
「駄目!!土方さん!!早く寝ないと子供が出来ないじゃない!!」
「―――――・・・は・・・?」
もしかして。
これは、もしかして・・・。
「お前、子供の作り方知らねぇのか・・・?」
「知ってるわよ」
きょとん、と沖田が土方を見返す。
「夫婦が仲良く手を繋いでたくさん寝たら、出来るのよ」
「――――――」
「仲良く手を繋ぎあうっていうのが重要ポイントで、朝手が離れてたら失敗なんだって。気にし過ぎて寝不足になるのも赤ちゃんに良くないらしいって。もしかして、土方さん知らなかったの?」
「・・・そりゃー・・・、初耳だ。ちなみにそれは誰に聞いた?」
「旦那」
旦那とは、今回ミツバの件で世話になった坂田銀時という男。
あろうことか、その一件以来、沖田が銀時に寄せる信頼は絶大なものになっている。
「土方さんが大人しく寝ないなら、無理矢理にでも眠らせろって、これ、プレゼントしてくれたの」
そう言って沖田が見せたのは木製の小刀。
「お前、それで俺を・・・、どうするつもりだ?」
「大丈夫。傷付けないで眠らせるツボ教えてもらったから」
何が大丈夫っ!?
突っ込む間もなく、目の前に星が散った。
気を失いながら、思った。
嫌がらせとか、悪戯とか、そんな可愛いものじゃねぇよな。
アイツ、もしかしてとことん邪魔する気じゃねぇだろうな。
っつー事ぁ、まさか、アイツ・・・・。
人の悪い笑みを浮かべた彼の顔が思い浮かぶ。
これはまた自分が1から沖田に説明して教えなくてはならないのか。
今までの経験から言って、沖田がそれをきちんと理解するまでの道程は果てしないものに思えた。
ヘタしたら「離婚する」とか言いかねない。



跡取りの正しい作り方を沖田に教える仕事は、ミツバに託そう。


頼む、ミツバさん、早く帰って来てくれ・・・・。


土方は涙ながらにそう願った。





















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このお話の続きのリクありがとうございますvvvK様っvvv
以前書いて消えてしまった物を探して、やっぱり消え失せていたので頑張って記憶を掘り起こし書いてみました。
どのお話もそうなんですが、はっきりした終わりってないのですよね。
続き書こうと思えばどのお話も書けちゃうんですよね。

とりあえずここで切ります。う〜・・・ん。でも、また、書ける元気が出たら書きますね。
本当にこれは漫画で描きたかったよーん。


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