死んでくだせぇ






向けた銃口はその人を捕らえる。
本気じゃない時なんてあっただろうか。
いや、何時だって本気で死んで欲しいと思っている。その人のその位置が欲しいから。



今日もぎりぎりで沖田の攻撃をかわした土方は目を吊り上げた。
「危ねぇじゃねーか!死んだらどーすんだ!?」
だから、そのつもりだし。
呟いた沖田の後頭部を、土方は力一杯殴りつける。
「お前に俺の代わりが務まると思ってんのか?」
それだ。
再び、沖田は小さく呟いた。
自分の頭が悪い事くらい知っている。馬鹿だから、おそらく自分は副長など器じゃない事を解っている。
剣だけでは近藤さんや真撰組を守り切れない事も。
だから、この人を殺せないのだ。きっと、そうだ。
「総悟・・・」
溜息混じりに、土方は沖田の名を呼んでその手を伸ばす。
沖田の頭にそっと触れると、よしよしするように撫でた。
「殴らせるなよ」
馬鹿だから、こんな時どうしていいのか解らなくて沖田の身体は硬直する。
どうしてこの人の声が、手がこんなにも優しいのか解らない。
殺意を向ける相手に、自分だったらこんな風に接する事は出来ない。
「殴らせようとしたんじゃねェ。殺そうとしたんでさァ」
「黙れ」
短く言って、土方は不意に顔を近付けた。その唇で、唇を塞がれる。
馬鹿だから、こんな事も許してしまうのだ。

死んでくれ。

いなくなってくれ。

俺の中から出て行ってくれ。

狂いそうなほど、心の中で叫んだ。




「お前は俺を殺さねぇよ」
しばらくして、無防備に沖田に背を向けると、土方は言った。
「なんで」
「殺気ってヤツを感じねぇから」
振り向いた土方はにやりと笑みを見せた。
「―――なんで・・・」
沖田は呆然と土方を見つめた。
この人は何を言っているのだろう?本気に決まっている。何時だって本気で殺すつもりだった。
殺せないのは、自分が馬鹿だから。
「いい加減、素直に言ってみろ。死んで欲しくねぇってよ」
「死んでくだせぇ」
「・・・お前な」
「死んでくだせぇ」
「・・・・・」
「死んでくだせぇ」
同じ言葉を繰り返す沖田を、土方は引き寄せた。
「いつか、な」
いつか・・・?
その時を思い浮かべ、沖田はそっと息を吐き出した。
いつか、いなくなるのならば・・・。
心の一番深いところにある何かを荒らされる、ざわざわとして気持ち悪いこの感覚。
もう少し我慢すればいいのならば。
「それでいいよ」
土方の腕の中で沖田は瞼を閉じた。
もう少しだけ、好きなようにさせてやる。

だからお願いだ。

何時かは必ず


死んでくだせぇ













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リハビリ感覚でSSを。
何かもう、ネタがないのは確かなんだな(苦笑)
総悟君への愛だけ解って頂ければ幸いです(だめだろ)

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