あいのかたち
ガッシャン!!!バキバキバキ
と、決して台所からすべき音ではない音共に
「よっし、終わったぜィ」
俺の死刑宣告がなされた。
「はい、土方さん。くりすますぷれぜんとぉですぜィ☆」
や、あの、うん。
総悟くんのエプロン姿とか、ウインクとかとっても可愛いと思うよ?
正直アレだね、その手にもってる奇怪な塊よりよっぽど食欲をそそるよね。
やたら可愛らしい台詞と共に、総悟が俺に向けて差し出したのは、
どう考えても悪意の塊だった。
「や、あのそれ・・・ケーキ・・だよな??」
「あったりまえですぜィ!ちょこれぃとけぇきってやつを作ったんでさァ!」
あ、うん。チョコレートケーキね。
チョコレートっつか、丸こげケーキみたいな感じだけどな。
「さ、どうぞ!」
や、どうぞって言われても、どっから食べんの??つか、フォークとか通るのこれ??
そう思いながらも、笑顔で差し出されたものを無碍にもできず、
俺はかなり引きつった顔で、それを受け取った。
「お、おいしそうだなぁ〜」
俺がそういうと、総悟はとたんにへっ、と笑って
「そうですかィ?土方さん目が可笑しいんじゃねぇの?」
といった。
「オイィィィ!!テメェでちょっと可笑しいなと思ったら作り直せ馬鹿!!」
「つくりなおしやしたよ??でも、何度作ってもこうなっちまうんでさァ」
おっかしィですよねェ〜。としみじみと言う総悟に、
コイツ見た目のまんま料理音痴か。と、俺は心の中でうなだれた。
エプロンは可愛いから着せたいが、それと同時に命の危機か。
コレ無理だな。毎日飯なんかつくられたら、毎日三途の川行きだ。
・・・そうだ、プレイにしよう。そういうプレイの日をつくればいい。
そうしたら、こういう姿も見られるわけだし。
などと悶々と考えていたら
「あっ!」
総悟が廊下を見つめたまま嬉しそうな声を出した。
つられて振り向くと、其処には顔の変形した(たぶん、お妙とかいう女のところでボコられたんだろう)
近藤さんがのろのろと歩いていた。
「近藤さーん!!」
総悟は、オイオイ、そんなでかい声ださなくたって気付くだろ。
というほどの声をだして、近藤さんを呼び止めると、台所のほうへ招き入れる。
「お?どうした総悟?エプロンなんてつけちまって」
近藤さんはごつい手で総悟の頭をなでくりまわしながら、ガハハと盛大に笑った。
「けぇき作ったんでさ!」
そう言って、もう一つさっき作ったので有ろうケーキを台所の奥からとりだしてこようとする総悟に
おいおい、こんなん近藤さんに食わせるつもりかよ。
と、自分の手元をみやる。
けれども、総悟が奥からもってきたのは
「はい、近藤さん」
「待て待て待て待て待てー!!!なんでそっちのはそんなんなの?!」
輝かしいばかりに、デコレーションまで完璧な生クリームのケーキだった。
まるで同じ人間が作ったとは思えないほどの違いに、俺がついつっこむと、
近藤さんは困ったなぁ〜とでも言いたげな顔で
「なんだ?トシはチョコレートより普通の生クリームがすきなのか?」
「いやいやいや、そうじゃなくてよ」
「困ったお人でさァ」
「だからよ、聞けよ」
言って、俺は手元のケーキと近藤さんのソレを見比べられるように並べる。
「お前、この差はなに?」
「チョコレートと生クリーム??」
「じゃなくてよ」
「・・・ちょっと形が不細工になったからって・・・俺は山崎の言うとおり、
どっちを作るのにも愛情を込めて作ったんですぜィ??」
「うっ・・」
今にも泣きそうな顔でそういう総悟(わざとやってるとはわかってる。わかっているが・・)に
俺はついつい
「わ、わるかったよ」
と、謝ってしまった。
すると、とたんに総悟はにっこりと笑って
「じゃぁ食べて下せィvv」
とフォークを俺に差し出す。俺は意を決して、フォークを手に取ると、
そのケーキなのか、炭なのか解らない物体をかけらほどけずりとり、
「・・うっ!」
胸を押さえて倒れこんだ。
近藤さんはなぜかその横で「良い話だ!」と涙していたが、
薄れ行く意識の中、其処泣くとこじゃないからぁぁ!とつっこむ気力があるはずもなく・・。
その後、副長室で目を覚ました俺は、傍らにいた山崎(看病してくれたらしい)に
「なぁ、俺やっぱ嫌われてんじゃねぇの??」
と訊ねると、山崎は不憫そうな顔つきで首を左右に振り
「いや、愛されてますって。ただ・・・局長へのそれと違って、歪んでんじゃないですかね?」
と、呟いた。
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色んな愛のカタチがあるのですねv
確信犯な沖田がツボです!そんな沖田に惚れこんでる土方さんも〜vvv
クリスマスフリーという事で頂いてきちゃいましたっvvvvしかも三本共!嬉しい〜vvv
蜜様のサイト様の小説、私すごく好きです!一人称のその文章が、なんだかもう切なかったり面白かったりなんです!
「旅立ち」のお部屋から是非どうぞ!
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