Vt..Day企画☆ ーWEB拍手にて随時更新中ー
サイト内にあるCPで沖田総受け目指してます。
設定など細かい事はなーんにも考えてません;本能の赴くまま;;


決戦




「頭痛ェ・・・」

寮で土方と顔を合わせた沖田は、大袈裟に暗い顔をして見せた。

「――――風邪か?・・・熱はねぇな」

沖田の額に手を乗せしばらく考え込んだ後、土方は徐に頷いた。

「ああ。今日はアレか」

納得した顔をする土方に、沖田は眉を寄せた。

「・・・分かってんなら見逃して下せェ。センセーに言っといてくれィ」

「分かった。お前、今日一日寮から出るなよ」

「――――ああ、良かった」

笑顔になった沖田はそのまま部屋へと身体の向きを変える。

一抹の不安を残しつつ、土方は学校へと向かうべく、寮を後にした。


今日とは。

2月14日。

世の中はチョコレートに踊らされる。

土方にとってもそれは関係なくはないイベントであったが、沖田は悲惨だった。

銀魂高校の中でも異様に人気の高い沖田総悟は毎年この日、女子に酷い目に合わされるのだった。

しかも、どうやら今年は女子だけではないらしい。

きっかけは3Zの担任、坂田銀八の一言。

「沖田くーん。明日もらったチョコ、せんせーにちょーだい」

どうせ食わないんでしょ?

そこで沖田はこう返したらしい。

「やだなァ、センセー。俺ァチョコ大好物ですぜィ?全部アンタの目の前で食ってやらァ」

銀八に対する嫌がらせのつもりだけでそう言ったのだと、土方は思う。

が、どこで誰が聞いているかも分からない校内。

その会話は直ぐに全校に伝わった。

“今年の沖田は全部食べてくれるらしい”

気持ちが伝わるとか以前に、自分の用意したチョコが彼の口に入る。しかも確実に。

目の色が変わったクラスの生徒達を、土方はげっそりと見た。

―――――アイツほんと、馬鹿。

とにかく寮にさえいれば安心だと、土方は大きな誤算をした。








2


部屋をノックする音。

沖田はテレビから目を離さずに返事をした。

「・・・どうした?遅刻するぞ」

その声は桂だ。

「俺ァ、今日は休みでさァ。気にしねぇでくだェ」

「風邪か?それはいかん!」

言うが早いか、ばたん、と勢い良く扉が開いて沖田は驚いた。

この寮で鍵を掛ける習慣などない。

「熱があるのではないか?さあ!ベッドへ!!」

身体を持ち上げられ、ベッドへと下ろされる。桂は見かけの割りに力がある。

「・・・へーき。いいから学校行けよ。お前が遅刻すんぜ?」

「――――お前の方が大事だ」

「――――――・・・へ?」

あまり表情が変わらない桂が、どこか嬉しそうにポケットから包みを取り出した。

まさか・・・・・。

沖田は嫌な予感に捕らわれた。

「これは、天の采配だろうか。こうしてこの日に朝から二人きりに、しかもベッドまで用意されてるとは」

取り出した包みを自分で開けて、桂は沖田の目の前に差し出した。

「・・・ナニコレ」

「ベスチョコだ。傑作だろう。昨夜夜なべして作ったのだ」

確かにそのチョコは桂のペットであるエリザベスの形に見えなくもない。

「食え。そして、俺の思いを受け入れろ」

「―――――嘘だろ?」

何でヅラが。むしろそっちが男からもらいそうな顔をしているヅラが。

沖田が困惑している隙に、桂はどんどん布団へと潜り込んでくる。

「おい―――――、」








土方が校門を通り抜ける瞬間、背後からすごい勢いで誰かがぶつかって来た。

「痛って――――!」

思わず相手を睨みつけた後、土方は目を見開いた。

「・・・総悟?どうしたんだ?」

ジャージ姿のままの沖田が息を乱して土方に縋り付いてきた。

「怖っ!寮怖っ!!つか、ヅラ怖っ!!!あんなとこ一日居れるかィっ!」

―――――まさか、桂まで・・・?

今日一日がとんでもない日にならないよう、土方は心の中で祈った。






3


「沖田確認アル」

「了解よ」

無線に返事をしたお妙は、数名の女子を振り返った。

「沖田君が来たわ。いい?みんな。抜け駆け禁止よ」

「去年も一昨年も抜け駆けしたのはアンタでしょ・・・」

ぼそりと呟くのはメガネを掛けた自他共に認めるM女、あやめ。

「何か言ったかしら?とにかく、抜け駆けは半殺しだから」

「・・・お妙ちゃん、僕は何と言っていいか分からないのだが・・・」

もじもじと顔を赤くしているのは自称男の九兵衛。

「大丈夫、九ちゃんは黙ってチョコを渡せばいいのよ。後は私が何とかしてあげる」

「とか言って。目立たせないよーにしようって腹ネコマンマ食べたい」

何時もはいないアイドルのお通まで今日はスタンバイしている。

「ちょ、もううるさい!皆!今日は団結力で沖田君を追い駆け、囲み、逃げ道を塞いでモノにするのよー!」

「・・・・それって犯罪だよな・・・・」

通りかかった銀八が呟く。

勿論、何も見ない振り、聞かない振りで通り過ぎる。

「俺、もてなくて良かった」

それは強がりではなく、本心だった。







4


「げ。」

校門の脇の茂みから顔を出す神楽の顔を見た途端、沖田は一目散に走り出した。

「・・・おい!人の顔見て逃げ出すとは失礼な奴ネ!!」

無線を放り投げると、神楽は沖田の背を追い駆けた。

「何で逃げるかー!!」

「飛び蹴り食らわされて寝てる間にヤられるとか有り得そうだし」

「そんなの、姐御しかしないヨ!つか、いい加減止まるヨロシ!!つか止まれ!!!」

「冗談」ちろりと赤い舌を覗かせて沖田は笑う。

「―――――お願いだから・・・、」

勢い良く動いていた神楽の足がふと遅くなる。沖田は思わず振り向いた。

「逃げるのとか、さすがのワタシも傷付くヨ。・・・コレ、食べて欲しいだけなのに・・・」

「・・・・・・」

10メートル程差が開いた所で、沖田はゆっくりと速度を落とした。

「前みたいに返事くれとかしつこく言わねぇか?」

神楽はこくりと頷く。

「今ここで食べてくれたらそれでいいヨ。それ以上望まない」

「絶対だな?」

「・・・クドイネ。女に二言はないアル」

前例がある分信用していいものか考えるが、何時になくしおらしい神楽にほんの少し同情を覚える。一日中逃げ回るのとどっちがマシか秤にかけるが、どちらも同じ位の比重を示す。

じり、と少しずつ近付き、沖田は神楽の手の中の物を掴むとまた直ぐに離れた。

―――――手作りかよ・・・。

包みを開けて沖田はごくり、と唾を呑んだ。

神楽を見ると、真剣な表情で此方を見つめている。

―――――胃、壊れませんように。せめて命はありますように。

恐る恐るソレを一つ摘んで口に入れた沖田は数秒後、呻き声を上げた。

「――――手前・・・、コレ・・・、何入れやがった・・・?」

「某有名店を真似してみたアル!アッチはポテチで芸がないから、私は酢昆布にしたヨ!自信作アル!超美味いネ!」

自信満々に胸を張る神楽に青褪めた顔で頷き、沖田はその場を後にした。

――――――逃げてた方が良かった・・・。








5


「いや〜、モテる男はやっぱ違うね〜」

自販機で買った炭酸飲料をがぶ飲みしている沖田に、後ろから声を掛けたのは銀八。

「・・・何の事でィ?そりゃ、アンタとは違う事ぁ確かだなァ」

「フェミニストって実は本命にはモテないって知ってる?」

「何でィ?そりゃ」

「女に弱いってさぁ、そりゃないわ。あんな事してたら今日一日でお前死ぬよ?」

どうやら銀八は、神楽との一連の行動を見ていたらしい。

「・・・別に、弱い訳じゃねぇけど・・・。後味悪いじゃねぇか・・・」

「変な所で男らしいよね。話聞いちゃうから駄目なんだと思うよ?無視無視」

「・・・・・」

嫌味を言いに来たのかと思ったが、どうやら違う。

「忠告感謝しまさァ」

沖田は銀八に笑顔を向けた。



銀八と分かれた所で、早速出くわしたお妙達に、沖田はくるりと背を向けた。

刺激はしない。走ったら追い駆けられる。そして、無視。

ぶつぶつと呟きながら早足にその場から逃げようとする沖田に、お妙は声を掛けた。

「沖田くーん」

無視無視。

本当に彼女達は黙って沖田を見送っている。

―――――対処法は野良犬と同じかよ。

ほっと溜息を吐き出すと、廊下の向こうで銀八が笑っていた。

「やればできんじゃん」

授業始まるぞ、という銀八に、何時もは考えられないほど大人しく沖田は従った。



「・・・何か、様子違ってたわね。何時もの棘棘しさがないわ」

動揺したようにあやめが言う。

「まるで僕等が視界に入っていないかのようだった」

「ほほほ。猫の様で実は子犬な沖田君に誰かいらない知恵を付けたようね。上等だわ」

お妙の瞳の奥がきらりと光る。

「お前は尻尾振ればいいんだって思い知らせよーかん!!」

「おー!」

そんな会話が交わされているとは知らずに、沖田は一つ難関を乗り越えた気になっていた。




6


授業中。こん、とお妙の頭に小さくたたまれた紙が当たった。

“沖田が最初に食べたのは私のチョコアル”

広げたそこに書いてある文字を見て、お妙は顔色を変えた。

振り向くと、神楽が勝利の笑みを浮かべてこちらを見ている。

“あるわけないでしょう!?寝惚けてんの!?”

返事を返すと、再び来る。

“神楽のチョコに入ってたのは何だ?って聞いてみればいいアル”

“アンタの事だからどうせ酢こんぶでしょう?”

“何でわかるんだー!?”

“単細胞の考える事くらい分かるに決まってるじゃない”

「姐御!今日はライバルヨ!!手加減しないネ!!」

「そりゃあこっちの科白だっつーのよ。抜け駆けって言葉知ってるか!?あん?」

がたっと派手な音を立てて、二人は立ち上がる。

「・・・おーい・・・」

銀八は冷や汗を掻きながら振り返った。

「「沖田!!」」

立ち上がった二人にいきなり名前を呼ばれ、沖田はびくっと目を覚ました。

「神楽ちゃんのチョコ食べたって本当!?」

お妙の言葉に、教室がざわ、とざわめく。

「本当だって姐御に言うアル!超美味かった言うアル!!私の名誉守れ!」

「・・・本当だけど・・・、何か・・・?」

寝惚けた顔のまま、沖田は返事をする。その事により、周りは一段と騒がしくなった。

「ぅお〜い。授業・・・、になんねーな。こんちくしょー」

銀八の呟きは騒音に掻き消された。






7


「それって、神楽ちゃんを選んだって事?それとも、“全部食べる”発言を実行しただけかしら?」

「何の話してんだかわかんねーよ。食ったら放っといてくれるっつーから食っただけでィ」

「やっぱりね」

ふふ、と鼻で笑って見下ろすお妙に、神楽は顔を赤くした。

「・・・じゃあ・・・、放っとくと約束すれば、俺のチョコも食ってくれますか・・・?」

ぽつり、と呟いた山崎に視線が集まる。

「昨日徹夜で作ったザッハ・トルテ!食べて下さい!!」

山崎は立ち上がると、沖田の目の前まで移動した。

「え・・・?何?俺?」

沖田は目を瞠った。

「がははー。じゃあ、俺のチョコも食ってくれ、総悟!友チョコだけどな」

「ふざけないで下さい!俺も同じだと思われるじゃないですか!」

きっと睨みつける山崎に、近藤は口を閉じる。

「では・・・、僕のも食べてもらおうか」

かたん、と席を立ったのは伊東鴨太郎。

「・・・じゃあ、僕のも食べてもらわないと」

顔を僅かに赤くして立ち上がるのは志村新八。

「何コレ。どっきり?」

三人の男に取り囲まれ、沖田は顔を引き攣らせる。

沖田と視線の合った土方は黙って首を振る。

「・・・あの、あの、俺はもう期待とかそんなのしてませんから!返事とかいらないですから!」

差し出される箱を、沖田は冷や汗を浮かべながら受け取る。

「うん。悪ぃけど、今腹減ってねぇんで、部屋で食うから」

それでも山崎はこくこくと何度も頷いた。

「も、もら、もらってくれた・・・!」

山崎と入れ替えに新八が進み出る。

「僕はあんまりお金ないんで、その、口に合うか分かんないですけど・・・」

「新ちゃん・・・。姉さんはそんな子に育てた覚えないんだけど・・・」

流石のお妙も呆然と我が弟を見つめている。

「姉さん、ごめんなさい。僕も自分で一時の気の迷いだって思うんです。でもやっぱり、今年で卒業だと思うと・・・」

「・・・今だけ目を瞑ってるわ」

眉を寄せ、お妙は瞼を閉じる。その間に新八から渡された包みを、沖田はやっぱり受け取るしかなかった。

「―――――僕は、返事はいらない、とは言わないよ」

伊東はそう言うと、口の端を上げた。







8


伊東は不敵な笑みを浮かべて周りを見渡した。

彼は数週間前この学校に転入して来たばかりなのだが、群を抜く成績、スポーツ万能、眉目秀麗、三拍子揃った彼に皆、一目置いていた。

「沖田君、誰彼構わず良い顔をするのは頂けないよ」

沖田はむっと顔を顰める。

「うるせーよ。説教なら他所でやんな。つか、ナニソレ?チョコ?アンタの冗談は笑えませんや」

「はは。僕も冗談は嫌いだ。これは単に、土方君が買っていたのでお遊びに便乗してみただけなんだよ」

伊東の科白に思い切り噴出したのは勿論、土方だ。

「・・・土方さん・・・?」

驚いた表情の沖田に見つめられ、土方は何度も咳払いした。

「――――伊東は笑えねぇ冗談が好きなようだ。誰が何時何処で、んな浮ついたもん買うってんだ」

「おや・・・、ここで言ってしまっていいのかな?」

「誰が信じるってんだ。ふざけんな」

「俺ァ、信じやすぜ。土方さん、何処の誰にあげるつもりなんですか?」

「手前!どっちの味方だ!?」

助けてやんねーぞ!と怒鳴ると、沖田は首を竦めて見せた。

「とりあえず、授業終わってから話そうか、沖田君。土方君も良かったら」

にこりと微笑んで伊東は銀八を振り向く。

「先生、中断させて申し訳ありません。授業再開して下さい」

すっかり寛いだ姿勢で、身を乗り出して見物していた銀八は慌てて立ち上がった。

「・・・え〜。・・・何の授業してたっけ?」

呟いたところで鐘が鳴る。







9


「沖田君には決まった誰かが居るのかな?」

放課になった途端、沖田は伊東に廊下まで連れ出された。

「・・・・何であんたに答えなきゃなんねーんでィ?つか、手!離せ!」

「逃げないなら離すよ。君に決まった相手がいないから、皆期待が捨てられない。貰う物だけ貰って皆の気持ちは知らん顔かい?」

「すげーやな言い方。くれるっつーもん貰って何が悪いんだよ!?つか、欲しくねーし。押し付けられてるだけだっつーの」

「まあ、それも一理あるな。・・・一つ提案なんだが、これ以上誰も君に近付かない方法がある、と言ったらどうする?乗るかい?」

沖田は眉を寄せて伊東を見上げた。

「相手に僕を選べばいい」

「―――――ふっざけんな!」

伊東は声を上げて笑った。

「勿論、形だけだよ。常に僕が傍に居れば皆諦めるだろう?」

「・・・アンタにそれで何いい事あんの?」

「――――土方君の悔しがる顔が見れる」

そう言うと、伊東は後ろを振り返った。

土方がこちらを気にしながら、何度も視線を向けている。

「土方さんが?なんで?」

「君は本当に気付かないのかい?土方君が買ったチョコは、君にあげる為のものだよ」

――――――マジで?

あまりの事に、沖田は何も返事出来なかった。










10


マジで?

土方さんが何だって?

つか、チョコ買ったの本当の話?

「返事は?」

考え込んでいる沖田に、伊東は訊ねる。

「いや・・・、何かその話もしんぴょーせいってモンがねぇし。考えさせてくれィ」

「あまり・・・、考えてる暇はないようだけど?」

「―――――沖田!」

その時廊下に響く大声で名前を呼ばれて、沖田は声の方を見た。

「アレ・・・、南戸・・・?」

剣道部の先輩で、とっくに卒業した筈の彼が居る。勿論沖田は彼を先輩などと呼んだ事はない。

「お前――――!食ったのか!?誰のチョコ食ったんだ!?吐け、吐け――――!」

ずかずかと歩み寄ってきて沖田の頬を掴む。

沖田は思わず彼に拳と膝を見舞っていた。

「相変わらずキモイっすね。アンタ来なくなってからすっげ毎日楽しかったのに」

「お前も・・・、相変わらず・・・、Sだね・・・。でも可愛いね・・・」

かがみ込んだ南戸を尻目に、沖田は伊東の腕を掴んだ。

「俺が食ったのはこの人のです。てな訳なんで、今直ぐ帰れや」

泣き出さんばかりの南戸に背を向けて、沖田は伊東を連れてその場を離れた。

「あいつ・・・、何やってんだ?」

会話は聞こえないが、一部始終を見ていた土方は苛々と唇を噛んだ。











******
拍手ありがとうございました!
本当に励みになってます!更新の糧ですvv
こんな調子ではありますが、とりあえず続けますーv
ちなみに終わりは全く見えてません(苦笑)14日に終わるかも解りません(多分無理)







戻る