第二十訓 学校の七不思議って一つは真実がある。
「一本くれよ」
声を掛けられ、銀八は素直にポケットから煙草を一本取り出し、声の主に差し出した。
目に染みる程の日差し。いつもの屋上。
彼との出会いも確か此処だった。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。出会いは教室だろうがよ」
「そうだっけ」
銀八はゆっくりと煙を吐き出すと、土方に視線を向けた。
「んで・・・、何?俺殴られんのかな?」
「そうしたいのは山山々なんだがな・・・。あいつが悲しむからしねぇ」
昨日全部総悟から聞いた。
そう言った土方に、銀八は苦い笑みを浮かべた。
自分よりもずっと、彼が大人に見える。
「ごめんね、我慢できなくて」
「謝んな。ムカつく。・・・それだけ手前があいつの事好きだって事なんだろうが」
「うん。・・・そうだったみたい」
土方は眉を寄せて、煙草を噛み潰した。
「あいつのあんなすっきりした顔見たの初めてだから・・・、何もいわねぇよ」
「・・・・ありがと」
銀八は苦笑した。
「俺ぁ、手前なんかより余程マシな教師になるよ」
「―――――・・・へ・・・・?」
銀八は目を見開いた。
「俺が立派な教師になって此処に戻って来たら、覚えてろ。見下してやる」
「―――――」
教師になんの?
驚いて確認の言葉すら出て来ない。
「・・・いや、無理無理。お前、先生って職業舐めてんだろ?」
「こんな不良淫行教師でも務まるんだから、俺なんざ完璧だぜ」
「いやいやいや、絶対無理。第一、卒業できんの?」
「それが手前の仕事だろうが!・・・つか、何笑ってんだよ・・・」
銀八の顔を見た土方は毒気が抜かれたように、肩の力を抜いた。
銀八は、嬉しくて不覚にも涙が出そうだと思った。
そんな自分の顔を片手で覆う。
「――――だって、お前があんま笑かすこと言うからよ」
「俺にこの職業を選ばせたんだから、ちょっとは手本らしくしろよな」
そう言って、土方は赤くなった顔を隠すように銀八に背を向けた。
「おい、もう一本寄越せ」
手を差し出した土方に、銀八は冷たい視線を向けた。
「もうやらねー」
「・・・おい」
「此処にちゃんと戻って来たら、幾らでもやるよ」
その時を想像するだけで、頭痛が押し寄せる。が、その感情に反して口の端は上がりっぱなしだ。
――――これだから、この仕事辞められねーのかな。
銀八は顔を上げると、迎えにきた沖田と、照れたままの土方と共に教室へと向かった。
翌年、3年Z組の生徒全員が奇跡的に卒業出来た事は、銀魂高校の七不思議として長い事語り継がれる事となる。
了
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お付き合いありがとうございました!!
番外編で神沖や高沖なんかも書けたらいいなぁ〜・・・。