そんな僕を他人は空想家と呼ぶさ

「蓮〜っ!」
朝から可愛い声で俺を起すのは真司。
「起きろよ!起きろって!」
ゆさゆさと俺に馬乗りになって揺さぶる真司の頭を掴んで引き寄せる。
「・・・お仕置きだ」
言いながら濃厚なキスを与える。
「な、・・・なんで・・・」
息も絶え絶えに真司は俺を睨んできた。少しも怖くない瞳で。
「そんなに色気ない起し方をするヤツはこうなる」
「色気・・・って!なんで、そんな・・・あっ」
首筋をぺろりと舐め上げると、真司は甘い声を漏らした。
「今朝はこの辺にしといてやる」
にやりと笑う俺を真司は潤んだ瞳で見つめている。
「・・・意地悪なんだからな、蓮は」
「遅刻するぞ」
ベッドから下りて着替えを始めた俺を振りかえりながら、真司はしぶしぶといった風に部屋を出ていった。
続きが欲しい、と言った表情で。
俺はこっそり笑った。

その時だった。
頭に強い衝撃を受けて俺は目を覚ました。
「悪い。かばん飛んでった」
真司が恐る恐る俺を覗き込んでいる。
「・・・どうやったらかばんがここまで飛んでくる?」
「いや、ちょっと、う〜ん、ってノビしたらさ・・・」
「・・・・・」
「それよりさ、蓮。お前どんな夢見てたんだ?なんかニヤけてたけど」
「・・・夢か」
当然だ。俺とこの城戸真司とはまだ出会ったばかり。同居を始めてまだ一週間あまりだ。
願望か予知夢か。どっちにしろ面白くない事だが、俺はこの男に惚れてしまったらしい。あんな情けない夢を見るほど。しかし、それを認める訳にはいかなかった。
俺には救わなくてはいけない恋人がいるし、城戸真司は敵だ。いずれは殺さなければいけない相手なのだ。
「無視することないだろ!?・・・睨むなよっ!とっとと出て行くから!」
ぶつぶつと言いながら真司は部屋を出て行った。


俺が花鶏で手伝いをしていると必ず真司が邪魔をする。
「蓮。今、誰もいないよ」
そう言って、キスをせがむ。
勿論、俺は唇を重ねる。
そのままその身体を引き寄せ、テーブルに押し倒したりもする。
「俺がお前を殺してやる」
そう言うと、真司はうっとりと瞳を閉じる。
「うん。蓮になら殺されてもいいよ、俺・・・」

そんな甘い言葉を吐くくせに。

現実の真司は実に可愛くない。

「真司君、蓮って時々どっか遠く見てるよね」
「うん。優衣ちゃんも気付いてた?たまにアッチ逝ってるよね」

二人の会話は俺の耳に届いている。
だが、このポーカーフェイスは決して崩すわけにいかない。
空想家だと他人に呼ばれるワケにはいかない。
夢の余韻に浸るのもあくまでこっそりと。

男のくせにかわいすぎる真司が全て悪いのだ。

「蓮」

今日も真司は優しく俺を呼ぶ。

戦いも終盤に近付いた頃、それは現実になった。
俺が物思いに耽る事もなくなった。アッチに逝ってるなどと言われる事もない。
現実の真司を抱いていた。あくまでも冷たい表情で。
出会った時から好きだったなどと口が裂けても言えない。

それでも偶に想像はしてみる。

戦いのない世界で。敵同士ではない俺達。

それはなんだか幸せで、滑稽だ。

「蓮、お前考え事多いよな。何考えてんだ?」
隣で真司がそう言って覗きこんで来た。
「俺は空想などしてない」

「蓮・・・お前って・・・少女趣味?」
「違う!」
断じて空想などではない。


あえて言うならば・・・

妄想家と言えるかもしれない。







終わってみる

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
なんじゃこりゃ。なんでこんなのに何ヶ月も悩むんだ。私は。
てか、題が難しいやね。すぐにヘンタイ蓮が(失礼!)浮かんだのはいいけど、オチがつかない。
つかないまま・・・、終わる。