それぞれの愛のカタチ (DOLL番外編)
蓮 Said
遠くなる意識の中、めぐらせた記憶・・・
いつからか?アイツの・・・城戸の様子がおかしいのに気がついたのは。
愛しいアイツを毎日抱いて、の全てをこの肌で感じていたかった。
できれば―――
部屋から出したくなかった。他のヤツの目に、アイツの姿を見せたくなかった。
だが、それは俺のエゴ。
そんな感情だけで、アイツの全てを縛りたくはなかった。ただ――
いつも笑っていてほしかった。あの笑顔で。
それなのに、アイツから笑顔が消えた。
それから、アイツの行動がおかしくなった。そして気がついた、首筋の赤い痣・・・
気が狂いそうになった。
“オレには、蓮だけだよ・・・もう他には考えられない。”
あの時そう言ったあの言葉は、ウソだったのか?
信じたかった・・・あのときの気持ちを、真剣な眼差しを。
だから、追求しなかった。
きっと俺の中に
“城戸は俺しか愛していない・・・愛せない”
そんな気持ちがあったのだろう。これこそ、俺のエゴだったのかもしれない。
そして、あの日。あの手紙。
誰が愛していないって?誰と過ごしていくって?
目の前にアイツがいたら、本気で殴るほど怒りが込み上げてきた。
“だから、お前の前から完全に消えるよ。完全にね。”
消える?完全に消えるって?
許さない。俺の前から消える事は・・・
―――違う―――
俺が、城戸なしでは生きていけない。アイツのいない世界なんかで生きていけるはずがない。
だから―――必死で探した。
手紙の最後の言葉で、アイツが思い出の場所・・・何も考えず、ただ互いを求め合ったあの場所へ行ったと直感した。だから、他は探さずあの場所へと急いだ。
林を少し入ったその場所は、アイツが一番気に入っていた場所。
柔らかな日差しが水面を照らし、一面緑の絨毯が敷き詰められているような湖畔・・・
湖に一番近い木にもたれるようにして、アイツは座っていた。
だが――
一面緑のはずが、アイツの周りだけ真紅に染まっている。
―――遅かった―――
俺は、その瞬間一番大切な・・・愛しい人を失ってしまったのだ。2度も。
もうこんな思いはしたくないと、あの時思ったはずなのに。また犯してしまった。同じ過ちを。
再び、城戸真司・・・秋山蓮として出会い、過ごす事はもうないだろう。
たとえ違う人間になったとしても、再び出会い愛し合う事はできるだろうか?
そんな奇跡を信じてみてもいいだろう。
アイツと再び出会えるのなら。
アイツのいない、この世界には何の未練もない。
今すぐそばに行き、抱きしめ怒鳴ってやる。
“何故、話を聞いてくれなかった?俺を一人にするな・・・”と。
アイツが敷き詰めた真紅の絨毯に腰をおろし、肩を抱く。
そして抱き寄せながら、夏子の事。俺が愛しているのはお前だけだと話した。
これで満足か?なら、俺もそばにいかせてくれ。
もう1人にはさせない、永遠に共に過ごそう。それが、今の俺の願いだから。
高見沢 Said
“これで、契約切れです。”
そう・・・君と俺との関係は、契約の上に成り立っている。
だが、俺は本気で君を愛してしまったらしい。だから、終わらせたくなかった。
たとえ君が、違う誰かを思っていてもかまわなかった。
でも、君は俺とはビジネスと割り切っていた。それが、何度関係をもっても肌に伝わって虚しかった。
いつか・・・と思っていても、それはかなわぬ願いだったようだ。
だから、俺は契約違反を犯した。そして・・・最後の賭けに出た。
調査した資料。偽りの内容を君に教えた。
そう、あの佐伯夏子と言う女性は君の愛しい人・・・秋山蓮とは何も関係などなかったのだ。ただの幼馴染。体の関係などあるわけがなかった。彼女はもうすぐ他の人と結婚するのだから。
さも、秋山と関係があるような報告書を渡しそれを見て私のところにきてくれれば・・・
しかし、君は私の元から去っていったね。それも永遠に。
こんなカタチで君を―――それも永遠に失ってしまうのなら、本当のことを教えればよかったと後悔しているよ。
俺は、君の全てが本当に好きだったんだ。
少年のように笑うところ。人を疑う事を知らないまっすぐな性格。感じやすいしなやかな身体・・・全てが。
そして君の笑顔を永遠に見れなくなると思うと、自分が犯した罪の大きさを感じずにはいられない。
だから、一生背負っていくよ。この罪を・・・
君の後を追うようにして秋山がそっちへ行ったけど、ちゃんと秋山と出会えることは出来たのかな?
もう離れないよな、きっと。君たちはこんなに強い絆で結ばれているんだから。
ココから祈っているよ・・・どんなカタチであれ再び出会い、永遠に過ごしていける事を――
デモね、これだけはわかってほしい。
俺は本当に君のことを愛していたんだよ。
本当にね・・・