舞い散る









舞い散るように降る雪が、春の桜を思い出させる。
愛しくて涙が零れそうになるあの日々、あの人達を・・・。



手の平の上に落ちては消えていくその氷の結晶を、いとおしく思う。
時代は変わっても季節は変わらない。
毎年、花は咲き雪は舞う。
私は激動の時を生き抜き、愛する人と平穏を手に入れた。



「鈴花」
呼ばれて振り向くと、私のこの世で一番大切な人が微笑んでいた。
「泣いているのか」
私の肩を抱き、彼は優しく聞いてきた。昔と変わらないその笑顔。
「いいえ」
私は首を振った。
「斎藤さん、風邪を引きますよ」
「もう斎藤ではないと言っているのに」
彼の苦笑に、私は思わず口を抑えた。
「あ・・・、つい・・・」
「忘れなくてもいいが、泣くな、桜庭」
そうして苗字で呼ばれるのは久し振りだった。彼の優しさに泣きたくなる。
「―――はい、・・・斎藤さん」
ありがとう、と私は呟いた。
彼は約束した通り、私を守ってくれた。
ずっと、今も、これからもこうして傍にいてくれるのだろう。


けれど、幸せだと感じれば感じるほど思い出す。
辛い別れではなく、楽しかった日々を―――





振り向くと、今でも其処に皆が居るように思える。
“桜庭くん”
今にも聞こえてきそうな懐かしいその声
“桜庭さん”
私はそっと目を閉じ、静寂に耳を澄ませる。



きっと、また会える―――






















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WEB拍手お礼に少しばかりの書き足し〜。

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