囁き


               




“お話があるんです”

そう言った桜庭君の顔を見て、柄にもなく俺の心臓は音を立てた。

隊士の一人として彼女を見る、扱う。そう決めたのは自分。

しかし、既にそんな事は無理だと、心の何処かで認めてしまっている自分がいるのも確かだ。

彼女は、女性だ。

美しい、その心根までも透き通るような、美しい女性。

だからこそ、秘めなければならない想い。

女性に慰めを求める俺の性分も、自分で既に理解している。

彼女を同じように見てはいけない。

彼女が綺麗であればあるほど、触れてはいけないと思う。

戒めを。

「今度は葛きり、食べに連れて行って下さいね」

照れたように微笑むその顔が可愛いと思った。

その囁きはとても甘い香りがした。



どうか最後まで綺麗なままでいて。












貴方が笑ってくれた。

優しく私を見た。

私の胸はずっと早鐘を打っている。

気付いてますか?

私は、貴方が好きです。














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