ねぇ・・・僕を見つけてよ。
ここでずっと隠れているんだよ・・・
・・・寂しい。一人って寂しい。
ねぇ・・・僕を見つけて。
かくれんぼ
移り行く季節。
だけど僕の体は、進む病魔に侵され以前のように動けないようになってきた。
みんなとも離れ、一人ゆっくりと過ごす日々・・・
刀を握って、町中を走り回っていた頃が懐かしい。
心地よい空気に触れたくて、縁側の柱に体を預けしばらく庭の様子を眺めていた。
“逃げろ〜〜!”
“待て〜〜!”
“きゃはは・・・・”
外から聞こえてくる子供たちの声・・・
壬生にいた頃、近所の子供たちと遊んだことを思い出す。
「壬生の頃を、思い出しますね・・・桜庭さん。」
盆に薬をのせてやってきた彼女の気配を感じ、話しかけてみる。
「ですね。沖田さん。起きていて大丈夫ですか?」
「今日はとても気分がいいんですよ。気候のせいでしょうか?」
「そうですか。でも、無理はしないでくださいね。」
「わかっていますよ。」
しぶしぶながらも起きていることを許してくれた彼女が、僕の横に腰掛けた。
しばらくの間、二人で黙ったまま外を見ている。
咲き始めた花、温かな空気に誘われて動き始めた虫たち。
すべてがの物が、生きているんだ。命があるんだ・・・と言うことを、実感する。
そして、自分にも・・・わずかながら命があるということを。
「桜庭さん、覚えていますか?壬生で子供たちと遊んだこと。」
「えぇ。よく、かくれんぼしましたよね。」
「ですね・・・桜庭さんは、隠れるのが下手でしたから・・・見つけるのは簡単
でしたよ、子供たちよりも。」
思い出しながら、自然に笑みがこぼれるのが分かる。本当に、楽しかった。
「そうですか?でも、沖田さんだって隠れるの下手でしたよ。私・・・すぐにみ
つけてましたもん。」
頬を膨らませて真剣に話す彼女の姿が、愛しいと思う。
「あなたが、かわいそうだから・・・わざと見つかってあげていたんですよ。」
「えっ・・・本当ですか?」
「あはは。さて、どうでしょうか?」
「もう!沖田さんってば。」
「あははは。」
久しぶりに声を出して笑っているような気がする。
本当に楽しかった。
そして、またしばらく黙ったまま庭を見つめ時間は過ぎていく。
「僕はね、今もまだ誰も見つけてくれてないような気がするんですよ・・・」
何故か口にしてしまった言葉。それは、いつも心の中にあった僕の本心。
誰にも話したことがなかったこと・・・これからも、誰にも話すつもりなんてな
かったのに。
それだけ、彼女に本当の僕を知って欲しいと思っているからなんだろう。
彼女だけには、本当の僕を―――
「知っていましたよ・・・いつだって一人ぼっちのような顔していますもん。」
「・・・えっ?」
「近藤さんや土方さん・・・みんなと一緒のときは、楽しそうにしてるんです
よ。でも、一人になると笑顔が消えて、なんていうのかな・・・迷子?」
「迷子?」
「はい。迷子になった子供みたいに寂しい顔をするときがあるんですよ・・・た
まに。」
「・・・」
誰にも言われたことのない言葉だった。長い付き合いの、近藤さんや土方さんぐ
らしか気が付いてくれない僕の心の中を、彼女は知っていてくれた。
いつも悩んでいた。迷っていた。
人を殺めることを、何も思わなくなった自分に気が付いた頃から。
そのキッカケを作ってくれたのも、あなたでしたね。
仲間といるときは何も考えることもなかった。でも、1人になってしまうと・・・
暗い闇が自分を包み込んでしまって。
今、どこにいるのか・・・どこに向かっていいのか分からなくなっていたから。
そんな自分に気が付いて光を注いでくれるあなたの存在。
言い知れぬ思いが・・・体の中を巡り、寒い氷のような世界にじんわりと暖かさ
が広がった。
静かに目を閉じ、うつむいく僕。
「僕は、もう見つかっていたのですね・・・」
「えっ?」
「いえ・・・何でもありませんよ、桜庭さん。」
意味もなく微笑む僕に、不可解な顔を向けどうしたのか聞くあなたの腕を引き自
分の胸の中へ閉じ込める。
柔らかな髪の毛に、顔をうずめ目を閉じればあなたの優しさに包み込まれた。
「お、沖田さん?」
「しばらくこのままで・・・いけませんか?」
「いえ・・・あたなが、そうしたいのなら。」
「あなたは、どうなんですか?」
「私も・・・・・このままでいたいです。」
「・・・よかった。」
「桜庭さん・・・」
「はい。」
「・・・・ありがとう。」
「沖田さん?」
抱きしめた腕に力を込めれば、あなたも僕の背中に回した腕に力を込める。
本当にかわいい人だね。
「桜庭さん・・・また、かくれんぼしましょう。」
「そうですね。だったら、早くお薬飲んで元気になってもらわないと。」
「ですね・・・今度は、簡単には見つかりませんよ。」
「私だって!」
顔を見合わせ、笑った。
そして、桜色の唇にそっと自分の唇を合わせる・・・
僕はずっと、この暗く寂しい世界に一人でいるんだ
そう思ってたよ・・・。
だけど、君は見つけてくれた。
そして、光を僕にくれた。
もう、迷わない。
僕は、まっすぐ進んでいけるよ。
君の元へ・・・
“もういいかい?”
“もういいよ。”
“・・・・”
“沖田さん、見つけた。”
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" さくらどろっぷす”香月恵様よりの頂き物ですvvv
こんな二人が大好きなのよvvvありがとうでっす!!!めっさ嬉しいです〜♪♪♪
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